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記憶に残るCWシナリオを人魚亭に集う
冒険者の手記として記録しました。
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★ 東の国で……
俺の名前はカイ。人魚亭の冒険者だ。この宿ではグレン、そしてアリシアのパーティが主に仕事を請け負っている。たまにはこいつ等のパーティに加わるが、俺はほとんど一人で仕事を受けることが多い。あまり人には言えないヤバイ仕事を請けることが多いからな。

俺は手記を書くような柄じゃないんだが、以前引き受けた仕事でヤバイ連中と面倒なことになりそうだったのだが、グレンがナシをつけてくれた。そのグレンからなんか書けと言われたんで、引き受けたんだ。酒をあおりながら人に話せることを考えているうちに、ふとあいつのことを思い出したんだ。

俺が引き受けた仕事は東の小国にある宿に小さな箱を届けることだった。依頼を終え、散策していると町の中央−城門の前で騒ぎがあって人だかりができていた。薄汚れた服をきた少女が門番に食って掛かっていたんだ。武術大会の予選が開かれている最中で、少女は出場できないのに大会に潜り込んだらしい。その少女がキーニだった。キーニは家計が苦しくて、妹が売られそうになっているんで、金が欲しくて大会に出ようとしたらしい。

帰りの馬車がでるまでの一週間、何もせずに遊んでいたのでは腕も鈍ってしまうんで、その武術大会に出ることにしたんだ。俺は予選を簡単に通過し、そして本戦一日目も勝ちを収めた。戦いの後、城を出ると夕暮れの広場で、キーニが俺を待っていた。
「あたしと…一回だけ勝負してくれないか?」
キーニがそう言った。大会に出て力がなく負けて、金が入らなかったのなら諦めもつく。だが、女のため武術大会には出られない。三年間、剣の修行をしながらも、金が手に入らず肉親が売られていくことに自分なりに納得したいとのことだった。俺の返事を聞かず、裏の空き地でいつまでも待つと言い残してキーニは去った。

夕暮れで赤く染まる空き地で、キーニが俺を待っていた。
「何も言わずに戦ってくれ。……あたしは全力でいく。カイも手を抜こうなんて考えないで欲しい」
そう言ってキーニは剣を鞘から引き抜いた。使いこまれているが、よく手入れされている剣だった。キーニの目は真剣だった。俺は心を決めると武器を構えた。キーニが掛け声と共に突進してきた。夕日のせいかキーニの瞳が潤んでいるように見えた……

キーニの剣には殺気がなかった。キーニの渾身の一撃をかわすと、俺は最後の一撃を放った。キーニが力なく崩れ落ちて膝をつく。
「これが実力の差か……こんなんで大会に出る気でいたんだから、笑っちまうよな」
剣を稽古でしか使ったことはないのだとキーニ言った。
「ありがとう。これですっきりしたよ。無理なお願いして悪かった」
キーニは身体をかばいながら通りの奥へと走っていった。夕闇に隠れてその姿はすぐに見えなくなった。

その次の日、本戦を終えたあとで、この武術大会は王がこの大会の参加者の中から優れた人物を探し出して、姫の婿に迎え入れるために開いたのだという話をある男から聞かされた。武術大会ではその後も俺は順調に勝ち進み、ついに決勝まで駒を進めた。決勝の相手は「地竜殺し」の異名を持つ強敵だったが、俺は勝ちを収めることができた。だが、俺には王族の暮らしは似合わない。命からがらじゃなかった−後ろ髪をひかれる思いで、俺はその町を後にしたんだ。

キーニは別れ際に俺にいろいろと教えて欲しいことがあると言った。知らなくてもいいことが世間には山ほどある。アイツは貧しくても日のあたる道をまっすぐに歩いていって欲しい。いまでも俺はそう思っている。

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参考とさせて頂いたシナリオ
シナリオ名: 『西の英雄の話』 ver1.0 製作者:NIFQ様

2006.06.12 Monday 21:49
[カイの手記] -
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