Material:月時館
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記憶に残るCWシナリオを人魚亭に集う
冒険者の手記として記録しました。
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★ 山師の女×機甲の兵士×人形使いの少年(その1)
「昔話書いているなんて、爺くさい!」
グレンが手記を書いているのを見て、そう思っていた。だが、グレンの駆け出しの頃を記した手記を読んでいる内に、昔のことが鮮明に蘇ってきた。いつも腹をすかせてはいたが、なぜかとても楽しかったあの頃−魔槍使いのスレイ−そう呼ばれたあの人がいた頃のことが……

「親父さん、今日も僕らに依頼を紹介してくれなかったね……」
僕は後ろを振り返って、後をついてくるアイリーンとラルフにそう言った。
「けど、これをくれたよ」
アイリーンは腕に抱えた果物を嬉しそうに持ち上げてみせた。皿洗いと店の掃除を手伝った僕らに親父さんが分けてくれたものだった。
「まぁ、仕方ないんじゃない。金まで払って子供にゴブリンを退治してくださいって頼む大人がいるはずないしね……」
ラルフが果物にかぶりつきながら、そう言った。グレン達は好事家アルブとかいう貴族のとんでもない依頼で長旅にでていた。子供たちだけのパーティに依頼しようという物好きな大人がいるはずもなく、僕らは暇を持て余していた。
「あれ、何?」
小さな路地を通り過ぎようとした時だった。アイリーンが突然立ち止まり、路地の奥の方を指差した。鎧を身につけた人が倒れている−だが、近寄ってみると、それは人ではなく、骸骨の仮面をつけた金属でできた人形であった。
「これって何だろう?」
「結構値打ち者かもしれないぜ」
そう言ってラルフがその鉄人形に触れようとした時だった。
「触れるな!」
路地の奥に一人の子供が立っていた。年齢は僕らと同じくらいだろう。だが、チビと呼ばれることの多い僕と背丈は同じくらい−いや、僕のほうがわずかに背が高い。目が大きく一見すると少女に見えなくもない。黒衣に身をつつみ、頭には鮮やかな蒼色の布を巻きつけていた。
「誰?」
「私はウィルフレッド。正統なる人形使いの血筋を継ぐものだ」
僕の問いに少年はそう答えた。
「人形使いって……この鉄人形を動かせるの?」
「これは古代文明の遺産である鋼で作られた機甲の兵士『機死兵』というものだ。それを魔力で操り自在に操るものを人形使いというのだ」
そのウィルフレッドと名乗る少年は腕を組み、さも自慢げにそう答えた。
「偉そうに……。じゃあ、何でこれがこんなところに倒れているんだよ?」
ラルフがそう言った。
「それは……その……これを動かすには相当の集中力が必要で……『グー』……」
ウォルフレッドのお腹がなった。
「な〜んだ。お腹すいているんだ。じゃあ、これ食べる?」
そう言ってアイリーンは親父さんから貰った果物をウィルフレッドに差し出した。
「いいのか?」
アイリーンが頷くと、ウィルフレッドはそれにかぶりついた。
「その代わりと言っては何なんだけど……お願いがあるんだ」
アイリーンはそう言うと、天使のような笑みを浮かべたんだ。

店の親父さんに見えないように、ウィルフレッドが呪文を描くと『機死兵』が喋り出した。
「依頼を紹介シテ欲しいのだが……」
「……新顔だね」
マントをかぶせ、目深にフードを下した『機死兵』を見て親父さんはそう言った。確かに、アイリーンの言う通り顔さえみえなければ、鎧を着けた大人に見える。ウィルフレッドは再び、『機死兵』に向かって呪文を描いた。
「我が名ハ、アギュートス」
「悪いが、フードを上げて、顔を確認させて貰えるかい?腕が立つなら誰でも構わないという依頼もあるんだが、お尋ね者に仕事をまわす訳にはいかないのでね」
僕らは顔を見合わせた。一瞬考えた後、ウィルフレッドは意を決して『機死兵』にフードの裾を少しだけ上げさせた。フードの下から白い骸骨の口が覗く。
「あ、あんた一体……?」
「彼はある城での戦いに参加しました。敵はその城の補給路を断つという戦法を取ったそうです。食うや食わずの日が何日も続きました。頬は削げ落ち、目は落ち窪み、彼だけでなく、その戦いに加わった者達すべてが激しい飢えと乾きに曝されました。彼は結局、生き延びることができました。けれど、戦いの前の容姿は二度と取り戻すことが出来なかったそうです」
ウィルフレッドは悲痛な面持ちで店の親父にそう言った。こいつ結構、芝居がうまい!
「あんたは?」
「私はウィルフレッド。見識を深めるために、彼と共に各地を旅している者です」
「頼ム」
『機死兵』は親父さんに向かってカウンターで頭が見えなくなるくらい深々と頭をさげた。頭が鎧から落ちそうになって、僕はカウンター下に滑り込むと『機死兵』の頭を素早く支えた。
「……お前達がこの人達と一緒に依頼をこなすのか?」
親父さんがラルフたちのほうを見た。ラルフとアイリーンが何度も大きく頷く。その隙にウィルフレッドに合図して『機死兵』の頭を元に戻すと、フードを目深に被せ、素早くカウンターの下に姿を隠した。……どうやらばれずに済んだようだ。それが証拠に親父さんは渋い顔をしていたが、依頼書の束の中から、新米の冒険者がこなせそうな依頼書をいくつか選び出してくれた。
「けど、あんた。子供ばっかりのパーティで大丈夫かい?」
「大丈夫ダ……」
親父さんが肩を竦めて側を離れると、僕らは『機死兵』の肩越しに依頼書を覗き込んだ。ゴブリン退治に隣町までのお使い−そんな依頼書の中で、僕はある依頼書に目が留まった。
『お金欲しくて命がいらない人 大募集!誰にでも出来る簡単な仕事です。詳細はジェーンまで』−ずいぶんと簡単なことしか書いていない依頼書だった。
「ああ、それか。ジェーンが、またろくでもない事考えているんだろうよ」
「親父さん、このジェーンって人、知ってるの?」
「ああ……」
このジェーンという人は、定職につくわけでもなく、いつまでも一攫千金を夢見てふらふらしている女性であることを店の親父さんは僕らに教えてくれた。
「一攫千金か……それができたら苦労は無いんだけどな」
ラルフがそう呟いた時だった。真っ赤な服を着たど派手な姉ちゃんが、人魚亭の扉を開けて飛び込んできた。
「いや〜危なかった。今度ばっかりは死ぬかと思ったわ」
「ぬ、ジェーン!また なんかしでかしてきたのか?」
「ま〜ね。盗賊ギルドにでっちあげの宝の地図売りに行ったら即バレでさ〜あやうく殺されかけたわ」
「いい加減ちゃんとした職を探せ。お袋さん、怒っていたぞ」
「気にしない気にしない。それより今回の仕事が『また』大もうけ出来そうでさ。誰か手伝ってくれそうな冒険者いない?」
ジェーン−親父さんにそう呼ばれたその姉ちゃんは僕らのチラッと見た。僕らは取り敢えず仕事の内容だけでも聞いてみることにしたんだ。

「いや〜助かったわ。この仕事は一人じゃちょっと辛かったのよ」
ジェーンは僕らにそう言った。ジェーンの依頼とは、簡単に言えば雑草の採取だった。近く不治の病の特効薬ができるのだが、その特効薬の材料には魔物の住む森にしか生えない雑草が必要不可欠である。今ならただ同然で入手できるその雑草を大量に入手して、特効薬が出来た時に高値で売りさばこうというのがジェーンの計画だった。考えてみれば怪しい話ではあるけれど、僕らはジェーンの口車に乗せられて、この依頼を引き請けることにしたんだ。

「ここは昔っからゴブリンとかコボルトが住み着いてるらしくて付近の村人も近寄らないの」
森の入り口に到着するとジェーンがそう言った。僕らは森の奥へと進みながら、目的の雑草を探し始めた。わずかではあったけれど、森に入ってすぐに目的の雑草が見つかった。期待をこめてさらに森の奥に進んでいくと、僕らはゴブリンと出くわしたんだ。
「ウガァッ!!」
ゴブリンが襲い掛かってきた。ラルフが鋭利な三枚の刃を連ねた投擲武器を投げつける。2体のゴブリンには避けられたが、1体のゴブリンに手傷を負わせて、武器はラルフの手元に戻ってきた。その隙に、僕はナイフを、アイリーンは石をひろうとスリングに装填して勢いよく回し始めた。
「な……、何やっているんだ!!」
ウィルフレッドが叫んだ。
「何って?」
「それで本気でゴブリンと戦うつもりなのか?冗談だろう」
「そう言うけど、大人用の武器じゃ重くて満足に戦えないんだから仕方ないだろう」
気が付くと僕のすぐ目の前にゴブリンが立っていた。
「しまった!」
ゴブリンが剣を振り上げるのが見えた。次の瞬間、機死兵が大斧でゴブリンの胴体を真っ二つに切り裂いた。その直後、風を切る音に続いて骨を砕く鈍い音がした。音がした方向を見ると、スリングに額を割られたゴブリンが倒れていた。2匹のゴブリンが倒されたのを見ると、最後のゴブリンはあわててその場から逃げていった。
「へー、器用ね」
「勢いよく振り回すと結構威力があるんだ、この武器。当てるのが難しいから結構練習したんだけどね……」
ジェーンにアイリーンはそう答えた。
「いつまでも馬鹿面してんなよ。とっとと行くぞ」
ぼかんと口を開けているウィルフレッドにラルフがそう言って蹴りをいれた。

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参考とさせて頂いたシナリオ
シナリオ名: 『 ジェーンと一緒 』 ver.1.5 製作者:じぇんつ様
groupAsk official fansite「寝る前サクッとカードワース_vol.3」より

2007.03.11 Sunday 00:43
[ロックの手記] -