Material:月時館
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記憶に残るCWシナリオを人魚亭に集う
冒険者の手記として記録しました。
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★ ジェーンの三毛猫狂想曲
宿にはたくさんの依頼が舞い込む。けど、僕らが引き受ける依頼は、他の冒険者が引き受けないような仕事ばかりだった。腕の立つ戦士を装った機死兵がいるとはいえ、他の仲間は子供ばかり−そんな僕らにまともな依頼がくるはずもなかった。けれど、その頃の僕らはいっぱしの冒険者になったようで、面倒な依頼をそれなりに楽しんでこなしていたものだった。

「ってわけでさぁ……下水道に住み着いたネコどもを何とかしてほしいんだよ。どうせヒマな冒険者いんだろ?」
店内に大きな声が響いた。カウンター越しに親父さんと女の子が話している。依頼はどうやら下水道に住み着いたネコの退治のようだった。
「報酬ならあるぜ〜。屑鉄通りのみんなで出し合ったんだ」
そう言って女の子がポケットから掴みだした小銭をカウンターの上におくのが見えた。
「100SPか……。屑鉄通りの住民ならよく出せた方なんだろうが、その報酬であの小汚い下水道に入る連中など……」
そう言って親父さんが僕らのほうをちらっと見た。僕の向かいに座ったラルフが親父さんから急いで視線を逸らす。
「ねぇ チビッ子。その下水道にいっぱいいるネコって野良?」
店にいた山師の姉ちゃん−ジェーンが少女に声をかけた。ジェーンは少女としばらく話をしていたが、何かを思いついたらしく目をらんらんと輝かせて僕らのテーブルに歩み寄って来た。
「よし。あんたらアタシが400sp上乗せすっから依頼受けなさい!それならいいでしょ?」
ジューンは暇を持て余している僕らにそう言ったんだ。

ラルフはこの仕事に最後まで反対した。前に、グレン達と引き受けた下水道掃除の依頼が原因であることは容易に察しがついた。けど、アイリーンが上手にラルフを説得してくれて、僕らはこの依頼を引き受けることにしたんだ。けど、この依頼を引き受けると決まった後も、ラルフはいろんな理由をつけてなかなか動こうとしない。仕方なくウィルフレッドが操る機死兵が引きずるようにして、僕らは屑鉄通りにやってきた。乞食や物乞いを横目に僕らは下水道の入り口近くまでやってきた。
「さて、んじゃ今回の作戦をアンタ達に教えましょうか」
ジェーンはそう言って僕らに虫取り網を手渡した。
「ま、やる事は単純よ。下水道のネコをとっ捕まえてそこのペットショップで売るのよ」
「しかし……下水道の野良ネコをそう簡単に ペットショップは買取してくれるものでしょうか?」
機死兵を操るウィルフレッドがジェーンにそう言った。
「大丈夫なんじゃない?ネコなんてのは 犬と違って言うこと聞かなくてナンボよ。綺麗に洗えばそこそこ見れるでしょうし。それにね、ネコを店で買うヤツなんてのは大抵金持ちなんだから店の方も きっと結構な値段で買い取ってくれるわよ」
「……まぁけどね。500spに さらにネコの売上がプラスされるんでしょ?ネコを捕まえる報酬としては十分よ」
アイリーンはそう言ったけれど、僕らは念のため、まずそのペットショップで話を聞いてみることにしたんだ。

「……あら、お客さんが来るなんて珍しいわ。いらっしゃい。」
ペットショップ『淫らな雌猫』には、店員のおばさん一人だけだった。僕は物珍しさにペットショップを見回した。可愛いネコや犬が檻の中からこちらをじっとこちらを見ている。
「ねぇ、 あなた、かわいいわね。お名前は?」
そんな僕らに店員のおばさんが妖しい笑みを浮かべて話しかけてきた。
「俺?……ラルフだけど」
「そう、ラルフちゃんっていうのね。そうだ、おばさんがお小遣いをあげましょうね」
店のおばさんはそう言うとラルフを手招きした。ラルフが半歩下がる。けれど、アイリーンはラルフの肩をポンと叩くと前に押し出した。
「それじゃ、ラルフ。後はお願いね。ネコの買取の件、きちんと確認しておいてね。下水道の入り口で待っているから」
「えっ!!」
店のおばさんがラルフのことを気に入ってくれたのを見て、咄嗟にアイリーンはラルフに買取の交渉を任せることにしたのだ。こうしてラルフだけを残して僕らは店の外に出ることにした。暫くして、ラルフが店から出てきた。手にはネコじゃらしが握られている。恐らくはネコを捕まえるためにペットショップの店主から貰ったものだろう。その手でラルフが涙を拭うのが見えた。
「どうだった?」
「そこのペットショップでの買取は無理だった。けれど、買い取ってくれる冒険者の宿を紹介して貰った……」
アイリーンの問いに力なくラルフはそう答えた。
「何かあったの?」
僕は恐る恐るライフに聞いてみた。
「あのおばさん、余程、鬱憤が溜まっていたんだな。お前らが店を出て行ってから、面白くもない話をずっと聞かされてさ……。しかも、こちらの話なんか全く聞いてくれないし。おばさんの前ではあくびをかみ殺していたけれど、店を出た途端涙がでてきてしまったぜ」
僕の問いにラルフはそう答えた。けれど、これでネコの買取先も確保できた。後は下水道にいるネコをつかまえるだけだった。

「うっ……この臭い……!」
「大丈夫さ、すぐに慣れる」
下水道に足を踏み入れるなり、顔を顰めたウィルフレッドにラルフがそう言った。下水道の奥のからたくさんのネコの鳴き声が聞こえてくる……。
「一匹や二匹じゃないわよ コレ。い〜い?ネコを虫取り網とかスキルとかアイテムを使って捕まえるのよ?ボコっちゃダメだからね!」
ジェーンが僕らに念を押した。僕らはネコを探して下水道を奥のほうへと進んでいった。
「いた!」
暗闇でネコの目が光っている。しかし、ネコは逃げ足が速かった。虫取り網を振るう間もなく、逃げてしまう。このため、僕らは作戦をたてることにした。僕がまずネコじゃらしを振ってネコの気をひく。その隙に他の仲間が虫取り網でネコを捕まえるという方法だった。これが結構いい作戦で僕らは早速2匹のネコを捕まえることができた。途中下水道に救うネズミを片付けながら僕らはネコの姿を求めて、さらに下水道の奥へと進んでいった。
「あの滝のあたりから何か鈴のような音がします……」
突然、ウィルフレッドが足を止めた。機死兵に命じて、滝の中を調べさせたウィルフレッドは滝の中から不思議な鈴を見つけたのだった。
「どうやら この鈴が鳴っていたみたいですね」
「でも 滝の中にあったんだったら鈴の音って聞こえなくない?」
「水中にいても音を伝える魔法…というのはさほど難しい魔法では無かったはずです」
ジェーンの問いにウィルフレッドはそう答えた。その鈴には不思議な力があるようで、ネコが寄ってくるようになった。僕らはその後4匹のネコを捕まえた。さすがに、下水道に響いていたネコの声も聞こえなくなった。これで依頼は完了した−そう判断した僕らは下水道の出入り口まで戻ることにしたんだ。
「今度は無事依頼が達成できたね」
「そうだな……。けど、最後まで気は抜かないほうがいいぜ。下水道は古代文明の遺跡と繋がっているという話だからな……」
そして、そのラルフの言葉ははからずも現実のものになったんだ。

下水道に獣の叫び声が木霊した。
「な……何の音よ…今の…?」
ジェーンが思わず叫ぶ。下水道のちょうど出入り口のところにヤギとヘビの頭を持ったライオンが居座っているのが見えた。
「キマイラ!しかし、キマイラと言えば魔術で作る合成獣…それが どうしてこんな所に…?」
「どっかの無責任な飼い主が世話しきれなくなって捨てた……とかかしら?」
ジェーンの無責任な答えにウィルフレッドは首をうな垂れた。キマイラは 動こうとしない。こちらに気づいてはいないようだったが、出入り口を塞ぐように居座っているため、例え眠らせたとしても、脇をすり抜けて外に出ることは不可能だと思われた。
「機死兵がいれば、大丈夫よね。ミノタウロスとだって互角に戦えたんだもの」
「……キマイラは炎のブレスを吐きます。機死兵は大丈夫でも、私達はひとたまりもありませんよ」
アイリーンの問いにウィルフレッドはそう答えた。
「機死兵がキマイラを引きつけているその間に、皆がここから出るっていうのはどうだ?」
ラルフがそう言った。
「……でも機死兵はどうやってここから出るの?」
「機死兵はキマイラを怒らせて下水道を一周してくる。で、逃げながら最後にここに来てここから外に出るんだ」
「なるほど、冴えてるじゃない!」
「……それも難しいですね」
ラルフとジェーンのやりとりを聞いていたウィルフレッドが異を唱えた。一定の距離以上離れると機死兵を操ることができなくなるというのだ。しかも、キマイラのような怪物とやりあうには戦闘に集中する必要がある。ブレスを避けつつ、常に一定の距離を保ちながら、戦闘に集中するのは至難の業だというのだ。
「だったら、お前が一定の距離を保って戦えるようサポートする奴がいればいいんだな?」
ラルフがそう言った。全員が互いの顔を見合わせた。ウィルフレッドをサポートできる敏捷さと危険を察知する能力がありそうな者−それはラルフしかいなかった……。

「んじゃ い〜い?下水道をぐるっと回ってくるのよ。アタシらは反対側に隠れていて、適当な距離まで離れたら脱出するからね?」
「畜生、今日は厄日だ!!」
ラルフがそう毒づいた。一方、ウィルフレッドは戦闘を前に神経を集中させているようだった。準備を整えるとラルフはそこらへんにあった石を掴んでキマイラに向かって投げつけた!
「さぁ、来い 三つ首野郎!」
キマイラは咆哮をあげるとラルフ達に向かって 突進していった。機死兵が突進してきたキマイラを両手で受け止めると、力ずくで引き倒した。
「逃げるぜ。ウィルフレッド」
ラルフはそう言うとウィルフレッドを引き連れて下水道の奥へと駆け出した。キマイラが逃げるラルフ達に向かって炎を吹く。炎はラルフ達には届かなかった。そして、キマイラはラルフ達を追って下水道の奥へと姿を消したんだ。
「機死兵が操り辛い。もっと近づくぞ、ラルフ。……近づきすぎだ!!……わ!! 服に火がついた……馬鹿野郎!! 下水で火を消すな」
「文句ばっかいいやがって!!」
そんな二人の声だけが暗い下水道に反響して聞こえてくる。
「大丈夫かな? あの二人……」
「今更どうしようもないでしょ。後はよろしくね〜」
ジェーンは下水道の奥に向かって、そう大声でそう叫んだ。僕らは先に地上に出ると、二人と機死兵がでてくるのをじっと待った……。ほどなくしてラルフとウィルフレッド、そして機死兵が下水道から飛び出してきた。二人は地上に出てくるなり、その場に崩れ落ちた。二人とも汚水まみれで、服はあちこち焼け焦げていた。
「くそ、死ぬかと思った……!」
ラルフはそういうと通りの真ん中で大の字になった。見上げると、雲一つない青空が広がっていた。

汚水を近くの川で洗い流すと、嫌がるネコを綺麗に洗うという作業に僕らはとりかかった。ネコはそこそこの値段で買い取ってもらえた。キマイラのことは僕らじゃ手に負えないので、帰りに清掃局に報告しておいた。宿に戻ってみると親父さんと灰緑色のマントを身に纏った魔術師がカウンター越しに話しをしていた。
「お前ら下水道に行って来たんだろ?この方が下水道に 魔法の鈴を落としてしまってな。うちに依頼に来たんだが、それらしい物はなかったか?」
「鈴ってアレの事じゃないの?ほら、下水の中に落ちてたヤツ」
ジェーンがそう言うと例の鈴が勝手に鳴った。
「おお、それこそワシの作った『ネコ集め鈴』!よかった、早々と見つかって…ありがとうございました」
こうして僕らは魔術師から300sp手に入れた。
「どうやら下水道のネコ発生はあの爺さんの作った鈴のせいだったみたいね」
「まぁ、これでネコもすぐいなくなるさ」
僕らは店にしたネコの退治を依頼した少女に簡単な報告し100spを受け取った。
「最初こんな奴等で大丈夫かと思ったけど曲がりなりにも冒険者だよな、見直したぜ」
少女は僕らにそう言ってくれた。
「それで、何があったんだ?その様子じゃ、ただ 下水道でネコ追い掛け回してたわけじゃあるまい?」
依頼を終えた僕らに店の親父さんがそうそう言った。
「その話をする前に揚げジャガでも作ってよ」
「あら良いわね〜。アタシもゴチになろうかしら」
「わかったわかった。金は入ったんだろうな?食べ物のツケは効かんからな」
親父さんのその言葉に、僕らはこの仕事で手に入れた報酬を取り出してみせたんだ。

依頼はそれなりに大変だったけど、結構稼ぐことができた。けれど、ラルフとウィルフレッドは顔を合わせる度に、喧嘩するようになってしまった。店の親父さんに言わせると犬猿の仲というらしい。死線を乗り越えた仲間は絆が強くなるという言葉を聞いたことがあるけれど、この二人は違ったみたいだ。この依頼の数日後、グレン達が町に戻ってきた。また、いつも通りの日々が始まる−僕はそう思っていた……。

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参考とさせて頂いたシナリオ
シナリオ名: 『 ジェーンの三毛猫狂想曲』 ver.0.9825 製作者:じぇんつ様
groupAsk official fansite「寝る前サクッとカードワース_vol.2」より

2007.05.06 Sunday 13:06
[ロックの手記] -